| 2006年11月8日(水) |
| 少子高齢社会に関する調査会 |
| 少子高齢社会への対応の在り方について |
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| 清水嘉与子・少子高齢社会に関する調査会会長(以下、清水会長) |
少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応の在り方について」を議題といたします。本日は、仕事と生活の調和について参考人から意見を聴取いたします。
本日は、法政大学大学院政策科学研究科教授諏訪康雄さん、株式会社日本総合研究所主任研究員池本美香さん、日本女子大学人間社会学部教授大澤真知子さんに参考人として御出席いただいております。
この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございました。
参考人の皆様方から、「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、仕事と生活の調和について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
議事の進め方でございますけれども、まず、参考人の皆様方から20分程度それぞれ御意見をお述べいただき、その後、各委員から質疑をさせていただきたいと存じます。
なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。
また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。それでは、諏訪参考人からお願いいたします。どうぞ。 |
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| 諏訪康雄・法政大学大学院政策科学研究科教授 |
御紹介にあずかりました法政大学の諏訪でございます。この後、パソコンの操作上、座って御報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)
仕事と生活の調和あるいは両立という、こういう言葉が、日本だけでなくて国際的にも議論され始めましたのは、恐らくこの20年ばかりのことではないかと思います。その背景には、今どこの先進の諸国におきましても一番多い家庭というのは実は夫婦ともに働いている家庭でございまして、夫だけが働き、妻は専業主婦であるという、こういう伝統的なパターンが大きく変わってきますと、それだけに仕事と生活の間のバランスをどのように取るかということは、家庭生活あるいは子どもの育児あるいは地域社会などとのかかわりで大変重要な問題になってきたわけでございます。
さてそこで、最初に人材の重要性ということでございますが、これは大澤参考人の方が専門家である経済の方々は、社会の幸福は社会の富の価値で測られ、そして社会の富を生むのは人材である、そこで人材の価値をどのように上げていくかということが非常に重要だというふうに言われているわけでございますが、この点で、最近の日本は少子化ということで、若い新たな社会を支える人材の量が減っていくだけではなくして、その質が維持されるのかどうかということについて懸念を持たれているわけでございます。
国際比較で大変有名なことでございますが、OECDがPISAと呼ばれる学習到達度の調査をしてみますと、日本はとりわけ読解力という点において、もはや先進国中のトップクラスではなくなってしまいました。真ん中より下のところへ来ておりまして、日本がこれまで目標としてきた国の一つであるドイツなどは大変悲惨な状況になってきております。
そのように考えてみますと、人材の確保ということも今までのような漫然とした考え方だけではいけないということが多くの人たちに共通の理解となり、また、今現在、教育問題を大変熱心に各方面が議論しているところなんだろうと思います。
国民が学習しなくなった、若い子が学力低下だと言いますが、実は読書量の調査を文化庁がやったところ、月に1冊も本を読まないという人が全国平均で38%、3人に1人以上おりまして、地域によっては6割にも達するという大変懸念される事態になってきておりまして、親の世代も本を読まなければ、次の次世代が本を読むなんというわけにはなかなかいかない。このようなわけで、教育という点で大変懸念がされております。
では、社会に出た人たちはどのように自分の仕事と向き合いながら勉強しているのかということなんですが、実は調査をしてみますと、日本の中高年はどうも余り勉強しない、国際的に見ても余り勉強していないんではないかとしばしば指摘されております。
自己啓発という、自分なりに仕事のために勉強したというこの比率を調べてみますと、実は3人に1人だけぐらいでございまして、3人に2人は自己啓発をしておりません。つまり、職場を離れ、あるいは職場で訓練されているとき以外は、自分で何らか将来に向けて勉強するということをしていない。
一体なぜ、日本は勤勉で勉強家の国だったはずだったのがこんなふうになってしまったんでしょうか。その一つのポイントがワーク・ライフ・バランス、仕事と生活のこのバランスがうまく取れなくなってきてしまっているんではないか。目先の仕事だけに追われてしまって、将来へ向けての自己投資ですとか、あるいは地域でのボランティア活動ですとか、このような様々な人間としての広がりを保障するもの、あるいは長い目で見て日本社会の維持発展に重要な要素、こうした部分についての投資がおざなりになっているんではないかということが懸念されるわけでございます。
少子高齢化の進む国、これは先進諸国どこもほぼ同様にこうした問題を抱えているわけでございますが、男女を問わない人材の育成競争が起きており、とりわけ育成した人材を持続的に活用していく。いったん能力を付けた後途中でエンジンを止めてしまいますとなかなかその先にキャリアがつながらない。そこで、持続的な活用。また、年齢とかかわりのない働き方。それから、働き方を柔軟化していって仕事と生活の間のバランスを取りやすくしていく。それから、多様な人材が多様なライフプラン、キャリアプランで行動するようになってきて、そういう人たちが同じ職場に混在していくようになりますと、こうした多様性に応じた管理の在り方。さらには、こうしたもの全体をつなぐ仕事と生活の調和あるいは両立という問題がそれぞれ議論されてきたわけでございます。
そこで、この場におけます課題である仕事と生活の調和あるいは仕事と生活の両立という問題は、なぜ改めて問題にされるんでありましょうか。
ここに一人の人間の、丸で描いた部分が活動領域だとしますと、それぞれの人は仕事の領域と生活の領域を持っております。そして、この仕事の領域が生活の領域に、真ん中の分けている線が寄っていきますと生活面が圧迫されていく。他方、生活の領域が仕事の方へどんどんどんどん入ってきて仕事の領域が十分に展開されないと、社会経済の活力が失われかねない。そういうわけで、マクロで見てもワークとライフのバランスは必要である。しかし、ミクロで見れば、更に個々人にとってこれがうまくいくかどうかが幸せの総量を測る非常に重要な指標になるわけでございます。
この点、まだ学校を出る前の学生たちにアンケート調査をしたことがあります。東京周辺の10大学の学生たちにアンケート調査をしたことがありますが、仕事と生活をどれぐらいの比率であることが理想なのかということと、それから社会へ出たら現実にどれぐらいになりそうかということを問うてみましたところ、男女計で仕事は半分よりちょっと少ない方がいいという、さすがに学生ですから若干たるんだ意見を言っているんですが、しかしながら、現実にどうなるかというふうに問うてみますと6割を超えて、つまりほぼ一人の人の持つ時間あるいはエネルギーの3分の2ぐらいを仕事が占めていくんではないかと予想をしているわけでございます。
皆様、注目していただきたいことは、男女の差がほとんどないということでございます。男女の差が本当になくなっていって、そして覚悟を決めて女子学生も社会へ出ていくわけでございますが、では、その先、出ていった後どうなるかといいますと、ワークとライフ、仕事と生活の間のバランス意識を国際比較で見てみたいと思います。
そうしますと、日本の数字は、これは電通が定期的に行っている調査でございますが、これによりますと、ちょうど仕事重視派と両方を同等に考えるというタイプと、それから余暇がむしろ重視、余暇、まあ生活というふうに見ていいと思いますが、こうしたものが3分の1ぐらいの比率で存在するのが日本のようでございます。
この仕事重視派は、ごらんになれば分かるように、中国は非常に多くて、日本、米国、ドイツ、スウェーデンと、いわゆる我々がイメージ持つ社会の成熟度みたいなものと関係しながら減っていくようでございますが、日本の場合に一つ特色が見られるのは、3分の1ずつでバランスが取れているように見られるんですが、実は一番いいのはやっぱり仕事も余暇も同等にというんですか、それなりにバランスを取りたいという意識の人たちが多いことだろうと思いますと、ドイツとかスウェーデンなどは大変それが多い。スウェーデンの場合は、余暇重視と、仕事、余暇を同等にというのを両方足しますと9割になろうとしておりまして、こういう意識を持ちながら、なお先進国として高い経済社会の水準を保つということはやはりそれなりの工夫がなされてきているんだろうと。我々もこうした工夫をどういうふうにやっていくのかが問われているのかなというふうに思われるわけでございます。
さて、先ほど女子学生と男子学生を比較してみても、仕事と生活のバランスに関して意識に大きな差がない、認識に大きな差がないということを見ましたが、しかしながら、現実には男女で仕事の世界でかなりの差があることは皆様御存じのとおりでございまして、女性の労働市場参加では、いわゆるM字型カーブと呼ばれる、若いころは高い比率で仕事に参加するけれども、結婚して育児をするころになると落ち込んで、そしてそれが終わるとまた社会に復帰する。しかし、この落ち込んだ段階のところでキャリアが切れてしまって次につながらない。前半はいわゆる正社員型で働く、しかしながら後半は非正規、あるいは非典型と呼ばれるような非正社員型で働くという、こうしたパターンが女性の場合にはかなり広く見られるのであって、同じように、労働力率が回復するといっても、その中身にはかなりの違いがある。そして、それは仕事と生活のバランスという点でもいろいろな影を投げ掛けると同時に、逆にいえば、仕事と生活を考えると、なかなか女性の場合は正社員型の働き方を選びづらいという状況にあるとよく指摘されているところでございます。
労働力率を国際比較してみますと、これは大澤参考人の正に専門でございますが、日本はこうした女性の労働力率で見てみますと、アジアの中でもシンガポール、香港、韓国などより低い状況になってきておりまして、やはりM字型カーブのMの落ち込んでいる部分、あれを他の欧米の先進諸国のように台形型にするというんでしょうか、ほとんど落ち込まない形にするという、こうした重要な課題を担っているのではないか、こんなことを予測させるわけでございます。
というわけで、ワーク・ライフ・バランスというのを考える場合には、2度とない人生を自分なりに、より悔いなく生きるという理念を再確認することが非常に重要なんだろうというふうに思っています。仕事の張りだけでなく、家庭を充実させていく、あるいは個人生活を充実させていくということがワーク・ライフ・バランスを考える際の非常に重要なポイントでございますと同時に、これがうまく取れていきますと地域コミュニティーの活性化にもかかわっていくだろう。
地域コミュニティーがなぜ最近これほど急速に、存在感を薄くしていくというんでしょうか、崩壊状態になってきたかというと、幾つかの大きな原因があろうかと思いますが、一つは、ついこの間までの日本社会においては自営業の方々が大変多くて、昭和の30年、1955年でも56%は自営業型で働いていました。雇用されて働く人は44%しかいなかったんですが、現在はほぼ85%が雇用されて働き、自営業型で働く人は15%ぐらいです。自営業は多くの場合地域に密着しておりまして、コミュニティーの支え手でありました。
そして平日でも、地域に自営業の方々がたくさんいるときには地域にこういう大人の目があったわけでございますが、しかしながら、勤め人はほとんど職と住が分離されてしまいまして、地域にはいなくなってしまう、平日に地域に人がいない。これをついこの間までは専業主婦の方々がかなり担って、補っていたんですが、この方々も今パートタイマーに出たりなんかする。そうしますと、地域に平日それを担う人たちが量として、客観的に見て大きく減っていってしまった。こうした問題を地域の活性化ということを考えるときにも改めて考えてみないといけない。その意味では、ワーク・ライフ・バランスというものは地域の再生という意味でも重要な課題でございます。
また、メンタルヘルス問題を考えるときにも当然これは落としてはならない問題でありまして、メンタルヘルスで様々な問題が起きるときは、調べてみますと、やはり仕事と生活の間にかなりの不調和といいますか、問題が抱えていることがあるわけでございます。
このように考えていきますと、持続的な社会経済の発展のためには、総体的に見て、こうしたワーク・ライフ・バランスが取れることが社会や企業の生産性を上げることにもつながっていくんではないかと思われるわけでございます。
ワーク・ライフ・バランスをではどのように実現していくかということでございますが、持続的で無理のない業務体制だけが中長期的に見て日本社会の生産性を維持し、経済の発展を支えることができるというふうに考えていったときに、しかしながら、すべての既存の仕事の中身を見直すことないままこれから減っていく労働力人口で支えていこうとしますと、そこには必ず無理が来まして、現在20代後半から30代前半層が非常に長い時間働いているというところに見られるように、減っていく人口に対して同じように仕事の負荷を掛けていったならば、これはワーク・ライフ・バランス以前でございます。
そのような意味では、やはり先進国化していく中で、付加価値の低い、将来性の薄い業務を思い切って削減して、こうして付加価値の高い、将来性のある分野に特化していく、それに沿って労働時間の合理的な見直しをするということを不可欠のように思われるわけでございます。
仕事の仕組みの見直しという点では、特定の性や年齢、家族スタイルなどを前提とした働かせ方、働き方というのが様々多様にこれから展開していくわけでございますので、そうした多様性に無理なく即応していくような工夫が必要なのではないかと思われます。
この点では、労働時間が硬直的ではなく柔軟になるということは私は重要な点だろうというふうに思っております。例えば、夫婦ともに共働きで大変厳しい労働時間を働かなければいけないという場合でも、片一方が朝早く出掛けていってその代わり夕方は早めに切り上げる、もう片っ方は朝遅めに出掛けていってその代わり夕方は遅くまで働くという、こういう組合せをしますと、それが柔軟にできるようになっていきますと、夫婦が仕事を継続していくことが可能になっていきます。
この点では、労働時間の柔軟化あるいは働き方の柔軟化というのは非常に重要な課題だろうというふうに思っておりまして、女性だけの問題と考えますとこれは非常に無理がありまして、男性を含めて考える必要があるということは今更指摘するまでもないわけでございます。
いずれにいたしましても、節度のある労働時間、適切な休日と休暇の確保というのはワーク・ライフ・バランスに向けた決め手の重要なポイントでございまして、この点で日本型の従来の働き方、その中にはかなり無駄が多いというふうにかつての労働時間短縮の際も言われましたし、今現在も指摘できる部分があろうかと思いますので、そうした部分を見直していくということが一つの課題だろうと思います。
それから、働く場所の柔軟化も重要でございます。時間だけじゃなくして場所の柔軟化ということが、例えばパートタイム労働の場合にはそれが魅力だというふうに女性には言われております。つまり、雨が降ったら布団をしまいに行ける距離で働きたい。こうしたしかし労働場所だけを望みますと、今度は仕事内容でキャリアがなかなかつながらないということになっていきます。その点では、部分的、短期的な在宅勤務、テレワークを取り入れるということも、いざというときの仕事と生活の調和、両立の維持には非常に重要であろうというふうに考えております。
在宅勤務を入れますと生産性が落ちるんじゃないかというのが一つの経営側の懸念でございますが、最近、私も関係した調査で、実証実験をかなりの期間にわたって、十何社の会社、百何十人の方に参加していただきまして行いましたところ、当然、在宅勤務で家族との時間は増えるかというと、増えるというふうに答えた人が圧倒的であっただけじゃなくして、実は生産性も、当人は上がるというのが多いんですが、職場に出ているのと変わりないというのと足しますと、重要なのは一番下にあります上司の認識でございます、上司は、両方足すと向上したか変わらないというのがほぼ9割でございますので、つまり、仕事の設計あるいは工夫次第では十分こうしたテレワーク、在宅勤務というものも仕事と生活の調和の一手法として組み込むことが可能なんだろうというふうに思われるわけでございます。
また、仕事と生活の調和という点では、キャリア形成の視点も非常に重要でございまして、忘れてはならない点でございます。ワーク・ライフ・バランスを取っていくときに、キャリアの問題を脇に置いてしまいますと、なかなか、キャリアがこれからは財産となっていく、すなわち、どのようなキャリア展開をしていってどのような仕事能力を高めていったかというのが、エンプロイアビリティー、いわゆる雇用される能力、あるいは市場におけるその人の労働力の評価というものに非常にかかわっていく。
それを支えるのが生涯学習だというふうに国際的にも言われておりますが、日々の仕事へ前向きに取り組むと同時に、折節に持続的に能力開発をしていく、このような観点からも、仕事と生活の間のバランスが取れておりませんと非常に難しい。国際的に見ても、日本は既に高学歴社会ではなくなっている。今国際的に見た高学歴というのは、大学院卒業生、修了者の、これが社会人の中にどれぐらいいるかというわけでございますが、日本では社会人大学院生、増えたといっても国際的に見ると大変少ない。そこには、仕事と生活のバランスがうまく取れないので、現代版の勤労学生であるところの社会人大学院生がなかなか行きたくても勉強の機会を持てないなどといった、こうした課題があるわけでございます。
いずれにいたしましても、これからは働き方として選んでもらう時代になっていきます。少子化で、わずか10年ほどの間で300万から400万の労働力がいなくなる。これから20年ちょっとぐらいを取りますと、1千万人ぐらいがいなくなっていくというふうに考えられるわけでございまして、その意味では、企業の側から見ても選び取ってもらう。
NHKが5年ごとに行っている大変いい「日本人の意識」という調査の中でも、働き方の理想の中に、仲間と楽しく働けて、専門知識や特性を生かせる仕事、こうしたものが1、2位になってきています。今から30年ちょっと前には、実は安全な職場というのが1位だったんです。その意味では、日本も成熟の次のステップに掛かってきているんではないか。ワーク・ライフ・バランスは、その点では非常に重要なポイントではないかというふうに思っております。
以上で私の御説明を終わらせていただきます。 |
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| 清水会長 |
ありがとうございました。
次に、池本参考人にお願いいたします。池本参考人。 |
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| 池本美香・株式会社日本総合研究所主任研究員(以下、池本参考人) |
日本総合研究所の池本と申します。
私の方からは、皆さんにお配りしております2枚のレジュメに沿って話をさせていただきたいと思います。
まず、本日のテーマはワーク・ライフ・バランスということで、仕事と生活全般の調和ということでございますが、私が研究テーマとしておりますのは少子化にかかわる政策ということですので、本日は子育てと仕事の両立、調和という部分に限ってお話をまずさせていただきたいと思っております。
それから、研究の視点としましては、少子化に関しましては、出生率が上がったか下がったかですとか、また少子化が経済成長にどういうインパクトをもたらすのかといった、そういうマクロの話が多いかと思うんですけれども、私はむしろ、この少子化の問題を引き起こしている当事者の世代の一人として、今の出産、子育てをするべきなのにしていない世代が置かれている状況、また余り視点に入ってこない子どもが置かれている状況というものからいろいろ物を考えておりまして、今日もその辺りから政策を見ていきたいというふうに思っております。
それでは、早速レジュメに沿ってお話しさせていただきますが、まず最初に、出産・子育て世代から見た少子化対策ということでして、少子化対策の流れについては皆さん既に御存じのことかと思うんですが、大ざっぱに流れをさらっておきますと、少子化が問題になってきましたのは、1986年の男女雇用機会均等法が施行され、そのすぐ後の90年に89年の出生率が過去最低になったという出生率1.57ショックが起こり、その辺りから子育てが問題になってきたわけです。そして、その後、女性が男性並みに働くために子育てを何とかしなければいけないという発想の下に、この94年のエンゼルプランですとか99年の新エンゼルプランなどでは、保育サービスの充実が中心になって進められてきたと言えると思います。2001年には、さらに保育所の待機児童ゼロ作戦という新たな対策も打ち出されまして、女性がとにかく男性並みに働く権利を保障するという考え方から、保育サービスの量的な拡充が目指されてきたということだと思います。
しかし、御存じのとおり、出生率はその後も低下を続けまして、そのために政府も、2002年になりまして、このままの対策では効果がないということから、少子化対策プラスワンを出しまして、そこでは、女性が男性並みにということではなくて、男性の働き方そのものを見直すということ、また、働くという方向から議論するばかりではなく、子育てが行われている現場、地域で子育てがうまくいっていない子育ての現状からも問題を解決していこうという、その二点が打ち出されまして、2003年にはそれが具体化した次世代育成支援対策推進法が施行されたところでございます。ここでは、企業に対して子育て支援のための行動計画の策定を義務付けたということと、自治体に対して地域のそういう子育て支援の状況などについての行動計画の策定を義務付けたということです。
そういった流れの中で、出産、子育てをしている世代はどういった状況にあったのかということなんですけれども、まず一つには、この時期は労働環境の悪化があったと考えています。一つは、先ほどもお話あったかと思うんですが、やはりパートタイマーなどの非正規職員が増えてきているということでして、これは、企業の経営環境は厳しいために、正社員を減らしてそういった形でパートなどで補っていこうということが90年代進められてきまして、そのために、今、正社員は過重な労働になって労働時間が増え、また非正規の職員につきましても収入が多く得られないために長時間働かなければならないということで、ともに長時間労働が促進されていったという時期にあり、そしてそのことがストレスの増大につながっていったと思います。
一方、親ではなく、その親に育てられる子どもの環境はどうだったのかということなんですけれども、ここでは保育環境も悪化しているということがあったかと思います。これは、親が長時間労働になれば子どもが預けられる時間も増えていくということで、保育時間が長くなったということ、そしてまた、その長く預けられる保育の環境なんですけれども、ここにやはり企業同様自治体ですとか国も財政難の時期にありましたので、保育に関して十分な予算を投じることがなされてこなかったということで、保育の質が低下し、例えば園庭がなくても済む保育園ですとか人数を超過して預かれるようにするですとか、そういった形で保育の質がこの時期低下したことがあると思います。そしてまた、家庭においても親がそういったことでストレスを抱えているといったことも背景にあって、児童虐待の増加というものも今社会問題となっているところです。
ですので、こうして見ますと、少子化対策は90年代からいろいろと保育サービス中心に行われてきたわけですが、それがむしろ長時間労働をサポートするような形で保育サービスが使われてしまい、子どもも、またその出産・子育て世代にとってもその少子化対策が幸せになる方向には作用しなかったということが言えると思っておりまして、このために私は、女性が働く権利ということだけを重視するのではなくて、あわせて、男女ともに子育てをする権利を保障していくという考え方が必要ではないかと考えています。
子育てをする権利というと非常に堅苦しい言葉なんですけれども、要は男女ともに子育ての時間をきちんと確保でき、かつその子育ての時間が人生を豊かにするというものであるという環境をつくっていく必要があるかと思います。そして、そういった観点から、私はいろいろ諸外国の政策でどのようなものがあるのかということで、子育てをする権利を保障する政策という観点から様々な政策を拾ってまいりました。
次に、二のところでその紹介をさせていただいておりますけれども、まず労働政策の分野では、代表的なものには育児休業制度があります。日本でも育児休業制度が最近では1歳6か月まで延長できることになりましたし、休業中の所得保障も40%ということで、それなりに充実されてきているわけですけれども、それでも中小企業などに行って話を聞きますと、40%の補てん率ではとてもじゃないけど休めないということで、制度はあってもそれが必ずしも利用されていないという現状があります。これに対して、スウェーデンやノルウェーなどでは所得保障が80%から100%ということでして、このために経済的な理由から育児休業が取れないというような状況が解消されておりまして、その結果ゼロ歳児保育もほとんど必要ないという状況になっています。
それから、全体的に所得保障の割合を高めるという国以外に、ドイツやフィンランドなどでは、むしろ休みにくいのは低所得の人であるわけでして、低所得者に手厚くなるような所得保障のやり方を考えているところもあります。ドイツなどでは定額の手当となっていまして、そしてむしろ高所得者にはその手当は支給されないというふうな仕組みにもなっているわけです。
そのほか、父親専用の育児休業期間を設けることで男性の子育てにかかわる権利を保障しようという考え方もあります。これはスウェーデンで60日、ノルウェーで4週間ということで、この期間は母親にその期間を譲ることができないわけでして、その期間は父親が休んでも80%から100%の給付があるわけでして、むしろ休まない方が損だというような感覚もあって、男性の育児休業取得率が急速にこの制度導入で高まったということがあります。
それから、短時間、休みではなくて短時間勤務の保障ということも子育てをする上で重要なわけですが、日本の場合も育児休業制度の中に企業に対して短時間勤務等の措置を講じるということを義務付けているわけですが、等となっていますので、企業に短時間勤務をやらなければいけない義務はなく、このために、実際に労働者の側が時間を短縮したいと思ってもできない場合も存在するということです。
これに対して、スウェーデン、ノルウェーでは育児休業の期間をまず、全日というか、1日単位で取るんではなくて、半日ずつ育児休暇を取っていくというような形で時短に利用することもできますし、またその育児休業の期間以外に子どもがいる人には労働時間短縮の権利を保障し、もちろんこの場合にはその減らした分賃金も減るということにはなっていますけれども、そういった権利も保障されているということです。
また、有名なところではオランダがフルタイムとパートタイムという、まあ日本でいえば正社員と非正規職員の格差を解消していくという政策を取っていまして、そのために労働時間を短くしやすくなっており、それが子育てにもプラスになっているということです。
それから、子どもが病気のときの看護休暇について、日本でもようやく育児休業制度によって労働者1人当たり年5日というものが保障されたわけですけれども、極端な例で言えば、スウェーデンなどでは子ども1人につき60日の看護休暇を認めるというような国もありまして、それだけ諸外国では、この労働政策の中で子どもと親が一緒に過ごす時間を保障しようという考え方が政策にも反映されているということです。
次に、二番目に経済的支援策なんですが、この辺りは余りこのワーク・ライフ・バランスの中では言われていないことだと思うんですが、そもそも親が働くのはお金が足りないから働くということもあるわけでして、もしも教育費に、日本などはお金が掛かっていて、それにお金が掛からなくて済むならば親が労働時間を短くでき、その分子どもと一緒に過ごすということも可能になってくるわけですが、その点で日本の教育費については諸外国と比べても親の負担感が強いことが言われています。
例ですと、このスウェーデンやオランダなどでは、私立学校を選んだとしても、そこには公立並みの公的補助があるために親は授業料負担をする必要がないという国もありまして、そこまでしますと、教育費のために子どもが多い人は長く親が働かなければいけないというような状況も緩和されるのではないかと思っています。
それから、二つ目の在宅育児手当ですけれども、これはノルウェーで98年に導入された比較的新しい制度ですが、これは育児休業が終わった1、2歳児の親に対して、保育所を利用しないで自分で育てている人に対しては、保育所へ出している公的な補助金を現金で親に給付するというようなことが行われ、そしてこの制度が導入されたのは、親がもっと子どもと一緒に過ごせるようにしようということを掲げて、そういった政策を掲げた政党が政権を獲得してこの制度が導入され、現在に至っているという状況があります。
ですから、手当は、児童手当などもそういう時間との関連では余り議論されていないわけですが、子どもと親が一緒に過ごす時間を増やすという目的で経済的支援を行うという考え方も諸外国ではあるということです。
それから、三つ目の保育政策ですけれども、保育政策で、私も海外に行って、日本のように延長保育があるのかとか、病気のときの保育はどうやっているかというようなことをいろいろ聞いて回ったんですけれども、むしろそういったことを進めるというよりは、親が保育活動に参加できることに力を入れていることに気付きました。
極端というか、非常にユニークな例ではニュージーランドのプレイセンターというものがありまして、これは保育所と幼稚園と対等な公的な認可と補助を受けた幼児教育施設なんですが、その施設はすべてその参加する親によって運営されていて、そしてその親たちが、そのネットワークを築きながら、また自分たちで、そのプレイセンターの場所で親も学習をしながら、親子で成長していくというようなことを理念に掲げて活動していく場です。
また、スウェーデンの親組合保育所というのは、親が組合をつくって保育士を雇い、自分たちの運営のやり方で保育所を運営していくということで、ここにも公的な補助金が投入されています。また、イギリスのアーリー・エクセレンス・センターというのは、モデル事業なんですけれども、これも保育政策を単に保育サービスを増やしていくということではなくて、そこに親ですとか地域住民の学習の場を設け、そのことによって親や地域をレベルアップすることで保育をより良いものにしていこうという考え方がなされているわけです。
そのような諸外国の事例を見ながら、日本の少子化対策への期待ということなんですけれども、まずそういった諸外国の子育てをする権利を保障する政策を日本に入れる必要があると考えているわけですが、その効果についても意識する必要があるだろうと思います。
日本ですと、子育てに親をかかわらせると、まず子どもがよく育たないのではないかということを言われたりですとか、親にとってはキャリアの形成にマイナスになるということから保育サービスの整備が進められてきたところがあるわけですが、逆に親子が一緒に過ごす時間を保障することによって親も子もより良い成長ということで、それは健康といったメンタルなヘルスのこともありますし、また子どもも親が見ている環境の方が能力が引き出されるですとか、親も子育てを通じてコミュニケーション能力や忍耐力が身に付くといったようなこともあって、そのこと自体は、親子の福祉向上に加え企業の生産性の向上、また経済成長にもつながると言えます。
また、ソーシャルキャピタル、社会関係資本の蓄積ということで、今、親が雇用の側に時間を割いているために、先ほどもありました地域のつながりがなくなってしまっているわけで、そこをつないでいくことによって治安ですとか教育にプラスの効果があり、そのことは公的投資の節約にもつながると言えると思います。
それから、子育てに親がかかわれるようにするということはその分新たな雇用機会が創出できるということで、それを若者の就労支援などにも充てることによって全体として雇用をいい形で配分するということにもつながると思います。なかなか目に見えにくいところですが、それでトータルで持続可能な社会づくりにつながるのではないかということです。
そういった観点から、労働政策、経済的支援策、保育政策については先ほどの諸外国の例に倣って日本も改正していく必要があるだろうということで、育児休業ですと、もっと取得の柔軟性を高めるですとか所得保障をどうしていくかという議論。また、正規職員と非正規職員の格差というものも見直す必要があります。また、労働時間の短縮を請求する権利というものが今後非常に重要になってくるのではないかと思っています。
それから、経済的支援策については、先ほども申し上げました、親子が一緒に過ごすための経済的支援という発想も今後いろいろな議論の中で必要になってくるのではないかということで、中でも重要だと考えておりますのが、その図表にも挙げましたけれども、日本では教育への公的投資が少なく、その分、親の負担も増えているということで、私立学校への助成の在り方、また、あるいは公立学校の質をどうしていくかというようなことについても議論が必要なんではないかと思っています。
それから、保育政策につきましては、これまで量的な拡大ばっかりが議論されていたわけですが、そこに置かれている子どもの福祉ということを考え、保育の質の向上をするということと、あとは、その保育政策の中で親を取り込み、親の育児不安を解消する学びと集いの場などを増やしていく必要があり、10月から認定こども園という新しい制度もスタートしましたけれども、そういったところでは正に親をもっと育てていく、また親同士をつないでいくということも保育政策の中でやっていく必要があるだろうと思っています。
最後に、もう時間もなくなってきておりますけれども、以上が政策的なことなんですが、こういった政策が、逆になぜ日本ではこういう政策が導入されないのかということですとか、あるいはこういった政策が導入されても本当に労働時間を短くして人々は子育てをするようになるのかということを考えた場合に、やはりこの(1)、(2)、(3)と挙げました3つぐらいがもっと根本的な問題としてあるのではないかなということを感じておりますので、そこも若干付け加えさせていただきたいと思います。
一つは、仕事をするといった場合に賃金を得る仕事だけが重要だというような感覚が広がってしまっていて、そのために子育てというものがなかなか人々を引き付けなくなっているのではないかということです。女性は昔は子育て自体に価値があると思って子育てをやっていたわけですけれども、均等法後、やはり外で働くとお金がもらえるという世界が広がったことで、それと比べて子育ては損だというような感覚がこの世代には広がっていて、そしてまた働いている人が何か立派なように見えてしまって、専業主婦たちは子育てという大切な仕事をしているにもかかわらず居心地の悪さというものがあるように思っており、仕事の質というものを、その賃金があるかないかではなく、仕事の質をきちんと考えていくという、そういう議論も必要ではないかと思っています。
それからもう一つは、この世代の特徴として競争だとか効率だとかスピードというものが非常になじみがあって、逆に協力だとか効率的でないものに対する抵抗感が強いために、子育てだとか地域だとかそういうものが苦手だということもあると思います。私も現在1歳3か月の子どもを育てているんですけれども、周りのお母さん仲間の話を聞きますと、そういう子育ての何かこう、うまく効率的にいかないことに耐えられないので仕事をしたいというような人も多くおりまして、その辺の協力の大切さ、非効率の重要性というようなものも少し考えていく必要があるだろうということです。
それから、最後ですけれども、もう一つは、なぜみんなが仕事の方に向かってしまうのかといったときに、やはり職場がむしろ地域や家庭よりも居心地がいい場所になってしまっているんではないかということで、ある男性の方で、なぜ会社にそんなに長く働くのかと聞くと、会社以外に行く場所がない、居場所がないということをやはり率直におっしゃっていて、子育てをしていても、やはり子育てをしながら行きたくなるような魅力的な場所がなかなかないために会社に行きたいというようなことも起こってきている中で、職場以外の居心地の良い空間というものを家庭、まあ住環境も含め町づくりから考えていく必要があり、そうしたことが進めば自然とそういったライフの方に人々が向かい、仕事の方を減らしていこうという政策なども動きが出てくるのではないかというふうに思っています。
済みません、時間を超過しましたが、以上です。 |
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| 清水会長 |
ありがとうございました。
次に、大澤参考人にお願いいたします。大澤参考人。 |
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| 大澤真知子・日本女子大学人間社会学部教授 |
では、座って説明させていただきます。
日本女子大学の大澤でございます。
私は経済学を勉強しておりまして、1か月ほど前でしょうか、2か月前ですか、韓国で国際会議がありまして、韓国も出生率の低下の問題と社会保障制度の問題で同じような悩みを抱えているということで、そこの会議でいろいろなことについて話をしてまいりましたので、その会議の内容も含めてワーク・ライフ・バランスについてお話をしたいと思います。(資料映写)
最初の2つの図は、もう皆さん御存じだと思いますが、人口構造が2000年から2050年にかけて非常に大きく変化して、若者の減少が著しい、こういったことから、子育てや生活と仕事の両立ができる働き方、生き方をしていくことがより重要な課題になっていくということがここから分かるのではないかと思います。
次に、これが、少子高齢社会でどんな問題があり、どういう問題を解決するのかということで韓国の国際会議の中で先進国の参加者がコメントした点なんですが、まあ少子化というのは個人の問題ではありますが、同時に産みたい女性たちが産めないような状況というのは望ましくないということで合意がありまして、出生率が、高い出生率というのはちょっと語弊がありますが、産みたい女性たちが産める社会、それからハイエンプロイメントというのは、良質な雇用がたくさん生み出されて失業率が少ない、そういう社会が望ましく、かつ維持可能な社会保障、まあここでは述べませんが、医療制度があるという、こういった三つの課題に直面して、現在多くの先進国は、出生率は低く、失業率は高く、かつ社会保障の維持が難しく、年金の支給を、開始年齢を遅らせるか、あるいは支給額を下げるというようなことをせざるを得ない共通の課題にあるわけですが、そういった課題を解決していくためにも、そういった今述べました、ここのスライドに書きました、出生率を維持し雇用を維持し維持可能な社会保障制度をどうやってつくっていったらいいのかということについて、私たちは共通の課題を抱え解決策を考えていかなきゃいけないということではないかと思います。
次に、もう一つ、1週間ほど前にちょうどロンドンでは今度は経済のグローバル化についての影響に関する会議がありまして、ここでは経済のグローバル化にどう対応すべきかという、これも先進国が共通に抱えている問題でございまして、これについて2つの可能性がある解決策について、グローバル化というのはどういうことかというと、より不確実な将来に対して柔軟で変化に迅速に対応できる仕組みを導入することが不可欠ということですが、それに対して一つのやり方というのは、正社員に対して非正社員、臨時社員ですとか派遣労働者ですとか、不安定な雇用形態の労働者を増やすことでその柔軟性を獲得することもできますが、他方で、正社員の働き方を変える、保障がある雇用形態の人たちの働き方を変えるということで対応することも可能なのであるということで。
じゃ、実際にどのような国でうまくいっているのか。経済成長率もある程度維持し、失業率も低く、かつ出生率も90年代になって回復しているような国はどこなのかというと、四つぐらいの国が浮かび上がってきております。アイルランドも非常に今パフォーマンスがいいということで注目されておりますが、そのように同じような課題に直面しているということでは先進国が共通なんですが、それに対する対応策をうまく取っている国もあれば、日本や韓国のように大きな問題をもたらしている国もあるということです。
一つ、じゃ、どんな形でうまくいって、うまくいっている国はどういう解決策を模索したのかということですが、基本的にはやはり労働時間を短縮したり、これはデンマーク、それから働き方を変えた国、これはオランダです。それから、アメリカやイギリスも比較的うまくいって、非正規労働者の増加が少ないという点ですが、うまくいっているのは、移動がしやすい、正社員から非正社員、非正社員から正社員という形で柔軟に労働移動ができる。それから、正社員と非正社員との間の均等待遇などの法制度が整っていると、そういうところでうまくいっているということが分かってきております。
次に、日本が抱えている課題、より具体的に見てみますと、先ほど池本参考人の方からもありましたように、育児休業制度が導入されてもちろんメリットはあったんですが、実際には7割の女性が仕事を辞めているということで、継続就業が増えているわけではない。
それから次に、働き方の希望と現実、これも諏訪参考人の方からお話がありました。これは学生ですか、実際に子育てをしているお母さんとお父さんに仕事と家事、育児、どちらを優先しているのかというふうに聞きますと、希望はどちらも優先したいという人が女性で6割、男性で5割。先ほどの話もありましたように、男性でも仕事と家庭と両立させたいという希望が多いのに対して、実際にそれを実現しているお母さんが全体の12.4%、お父さんが25.9%ということで、やはり現実問題としてそれが実現できないような、そういった状況になっているということです。
これは私の研究テーマであります女性労働の日米比較の中で出産前後の就業形態の変化を見たものですが、簡単に結論だけ申しますと、アメリカの場合は非常に正社員での継続が多く、出産が余り継続就業に影響を与えていないのに対して、日本では非常に大きな影響を与えているだけでなく、ちょっと戻りますが──ちょっと済みません、言いたかったのは、正社員の短時間勤務を組み合わせることによって継続している人がアメリカでは1割ほどいるんですが、日本にはいないということです。
結果として、日本は何が欠けていたかというと、正社員で労働時間を柔軟に選べるという制度がなく、90年代に労働時間が非常に長くなって、継続就業が難しくなったということが現実であり、日本の制度は、総じて見ると、専業主婦かキャリアウーマンかどちらか、仕事を優先するかあるいは生活を優先するか。その両方を優先するという選択肢を提供してこなかったわけですが、6割の女性は専業主婦、両立を目指していて、その可能性さえ提供できればこの人たちは両立し、かつ子育てをするということで、ここにターゲットを絞るしかないということです。
もう一つ申し上げたかったのは、ワーク・ライフ・バランス、この中でも女性の仕事と育児の両立ということが問題になりがちですが、実は、これは女性だけの問題ではなくて、男性でも、正社員、短時間でしょうか、少し労働時間を短くしたいと。その中で特に、時間を短くして学習活動をしたいという人が男性でも73.1%。ですから、育児をしたいから労働時間を短くしたいという希望もありますが、それだけではなくて、むしろもう少し学習をしたいと。先ほど人材が命だと、その自己啓発をする人が少なくなっているということが指摘されましたが、実際に希望を取ると、自分で学習したいというふうに思っている人が多い。ですから、特に技術系ですか、若い男性、非常に勉強したいと思いながら仕事が過重でできないという、そういった問題を抱えているということを御理解いただきたいと思います。
これはちょっとアメリカのケースですが、今アメリカでもワーク・ライフ・バランスの導入ということに非常に熱心に取り組んでおりまして、女性の問題だけではないということで申し上げますと、2012年までにアメリカでも600万人の高スキルの労働者が労働市場から退出すると。そういった人たちの働き方、どういう働き方を望んでいるのか、これも柔軟な働き方が望まれているということで、日本だけではなく、各国で柔軟な働き方を導入する取組が行われています。
これは、詳細は申し上げませんが、大体10ぐらい、かなり働き手の希望に合わせて、フレックスタイムですとか在宅勤務ですとか期間限定労働時間短縮、これは子どものいろいろな教育の必要に合わせて労働時間が短縮できるような、そういう働き方を提供しているという、これはイギリスの例ですが、かなりいろいろな形で労働時間の選択肢を広げているということです。
じゃ、実際にワーク・ライフ・バランス導入するとコストが掛かるのか。7割が最小限掛かる程度でほとんど重要ではない、あるいは全く掛からないということを言っております。また、次にワーク・ライフ・バランスの効果について聞きますと、従業員がハッピーになったというところが一番大きくて、あと、パフォーマンスが向上した、定着率が高まったという、これイギリスの例ですが、定着率を高めるということは盛んに私がヒアリングをした弁護士事務所などでも強調しておりまして、日本でも銀行を中心に今ワーク・ライフ・バランスの導入を進めておりますが、やっぱりリーダーがそういった視野で人事管理をしていることが重要で、なぜそれが必要なのかというふうに聞きますと、人材確保、つまり、これからいい人材が確保できないと業績が上がらないということで、いい人材というのは、自分でもよく勉強しているし、ワーク・ライフ・バランスに非常に関心が高いと。そういう人を確保するために自分たちは積極的に働き方を変えて、いい人材を確保していきたいということで、ワーク・ライフ・バランスが積極的に取り入れられるようになっておりました。
実際にそういったことで、私は今年、去年辺りから、イギリスやオランダやデンマークで、実際に働き方を変えたり、共働き世帯に対応をしていろいろと制度を変えた国を訪ねてまいりましたが、そういった国の制度と日本の制度を比較してみますと、やはり日本の制度においては、ワーク・ライフ・バランスを積極的に導入するような環境よりは、むしろ正社員の数を減らして非正社員の数を増やそうというようなインセンティブが強く働く制度が存在しているということが言えると思います。
労働法制、今日それにお詳しい諏訪先生もいらっしゃいますし、社会保障制度、それから雇用保険制度を見てみましても、やはり正社員中心になっておりまして、正社員に手厚く非正社員には手薄ということで、それは働く側の保障がないという問題もありますが、同時にそれがメリットとなって、経営側が非正社員を増やすというインセンティブを社会が与えていることになります。
そういった制度をほかの国でも持っているのかどうかということを研究いたしましたが、多少パートタイマーについて、労働時間が短い労働者に対して適用を除外する制度があります。例えばドイツですとか、それからデンマークにもそういった制度がありますが、日本の場合は適用除外の要件が非常に高い。それから、要件の条件に配偶者がいるかどうかというようなことが大きく利いておりまして、制度全体としてやはり男性が働いて女性が補助的に働く、あるいは家で育児をするということが前提となった制度になっておりますので、これを変えていくことも非常に重要なのではないかと考えます。
改革の方向性としては、様々な医療保険、社会保障制度の適用に雇用形態間の差を設けないと。例えば、支払総賃金を基準として保険料を納めるというようなことをいたしますと、税収、社会保険料も増えていきますので、今のように正社員だけに負担を強いるようなこともなく、社会保障制度などもより安定的に維持できるのではないかと思っております。
それから、今議論になっておりますが、既婚女性の非課税限度額103万円、それから先ほど申し上げました社会保険加入義務年収の130万円と、こういった要件も日本特有の制度になっておりまして、これがパートの低賃金化をもたらしているというのが労働経済学の結論になっております。
非正規を増やす制度があり、かつ非正規の人たちの賃金が安いということは、結局は、景気が回復しても所得が増えずに消費が増えないということで、日本の経済全体にとってマイナスの影響が非常に強いということを考えまして、今後の在り方を考えるときに、ワーク・ライフ・バランスの導入とともに、社会保障制度、税制度あるいは雇用保険の見直しというのも非常に重要になってくるのではないかと思います。
以上です。 |
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| 清水会長 |
ありがとうございました。
以上で参考人からの意見聴取を終わります。
これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後4時をめどとさせていただきます。
なお、質疑者及び各参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。
また、多くの方が御発言できますように、1回の御発言はおおむね3分程度とさせていただきます。
なお、質疑の際は、最初にどなたに対する質問であるかをお述べいただきたいと存じます。
それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。 |
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| 〜 中 略 〜 |
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| 神本美恵子・参議院議員(以下、神本議員) |
民主党の神本美恵子でございます。今日はありがとうございました。
今日のお話からちょっとそれるかもしれませんけれども、私、学校の教員を前していたんですが、80年代の女子差別撤廃条約批准前後の国際的な女性運動の高まりの中で、それまで日本社会もそれから国際的にも、いわゆる男、男性が社会的な仕事をし、賃金を得て、女性は家庭で子育てなり家庭生活の中心的な担い手としてやるという性別役割分業というのが一般的、当たり前だったんですけれども、そうではなくて、女性も男性も、仕事も家庭生活、地域生活も含めてですが、どちらも、何といいますか、担いながら人生を生きていけるようにしようという意味で、女子差別撤廃条約では、特に働くことは、人間にとって性別にかかわりなく何人にも奪えない、奪い得ない権利であるという、これは非常に、戦前からずっと働いてきた女性たち、余儀なく働かされたとか自分の自己実現で働いたとか様々な状況があったと思いますけれども、そういう人たちにとっても福音のように聞こえた条約だったというふうに私も先輩から聞いてきましたし、じゃ、これからを生きる子どもたちに、また国際社会の中でも活躍する子どもたちに、女性であれ男性であれ、家庭生活も仕事も自己実現、そこでできるようにするにはどういう教育をしたらいいかということをずっと研究してまいりました。
そうすると、課題としては、性別で役割が分業になっているところで、男の子には、地域生活、家庭生活における自立の力といいますか、そういう力を育てる、そこがへこんでいるからそれを付ける必要がある。女の子には、社会的な仕事で自己実現できるということを特に強調して教える必要があるというふうにやってきたんですが、今や、今日のお話のように、仕事と生活の両方をすることによって、より豊かに生きていくこと、精神的にも経済的にも人間的にも豊かに生きることができるんだということを、なかなか現実そうなっていませんので、教育の中で、机上で理屈を教える、教えたって全然それは子どもの心に届かないので難しいとは思うんですが、やはり教育の中で、こういう方向でいくことがいいのではないかというふうなことを教えるとすれば、その幾つか課題、教育課題として、子どもへのメッセージといいますか、もし、今日は議論になっていませんので難しいかもしれませんけれども、言っていただければいいなと思います。
特に、今、国会では教育基本法の議論があっていますが、その中でも、政府提案の中で職業観とかそういうものを育てるというふうなのが入っていますけれども、どのような職業観を育てようとするのか。基本法に書くのがいいか悪いかは私は別の意見を持っていますけれども、ここは議論の場ではありませんから。ただ、特に高校の世界史の未履修問題が今出ていますけれども、中学、高校の社会科や家庭科という教科は非常に今カリキュラム的に軽視されています。これは非常に問題だと思いますが、そういったことも含めて御意見をいただければと思います。 |
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| 清水会長 |
| 神本さん、どなたに御質問ですか。 |
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| 神本議員 |
| どなたでも結構です。 |
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| 清水会長 |
それじゃ、どなたでもということでございます。
池本参考人、どうぞ。 |
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| 池本参考人 |
すみません、教育のことは私も今ちょうど最後に言っておきたいなと思っていたところだったんですけれども。
先ほど、男性がなぜ育児に参加しないか、長時間労働で60時間以上働いているのかといったときに、男性はやはりそういう教育を受けてきている。要するに、競争に勝つことだとか、そういうことが立派だという教育を受けてきて、それが今の時代にやっぱり合わなくなっているということが多いと思います。男性自身も今子育てにかかわりたくて、今売れているのは男性向けの育児雑誌がいろいろ出ているわけですが、男性もそういう知識を求めていて、上の、自分の父親にはそういうモデルがないわけですから、そういう教育を、今は育児雑誌になっていると思いますけれども、そういう教育の機会は非常に重要だというふうに思っています。
あともう一つ、次の世代の教育ということでいいますと、今、次世代育成のそういう計画の中でも、まず、先ほど大澤先生おっしゃったように、子育てがどういうものかとか、楽しいものだとかいう体験が全くない世代が今親になろうとしていて、今、私なんかもそうでしたけれども、ずっと職場で聞く話では、職場との両立が大変だという話ばかりが女性の耳に届いていて、そんな猛烈なというか、何といいますか、ハードなものはとてもできないというようなことで、どんどん先延ばしになってしまっているということがあると思いますし、そもそも子どもがかわいいとか、そう思う体験もなく、学校の中で勉強だけをしてきた世代というのが今、少子化をもたらしている、私も含めてですけれども。
私がなぜ子どもを産みたくなったかというと、やはりそういう子育て、すごく楽しくやってきたという人で、それがまたうまく生活と仕事をバランス取ってきたという、そういう先輩の女性と出会ったことで、ああ、すごい、自分もできそうかなってちょっと思って、そういう方向に向かったという、それは個人的体験ですけれども、だから、そういうきっかけを教育の中にもっとたくさん広げていく必要がありますし、またそういう教育は学校だけではなくて、地域でボランティアだとか、お父さんが地域にいて何かをやっている姿が自然にあるようにすることが一番重要なんではないかなと思います。
私も、なぜスウェーデンがそういうふうに家庭生活を大切にするかというと、それは教育の成果が大きくて、何も仕事でやるだけではなくて、どういうふうに、例えば地域の環境を良くしていくかとか、子どもの教育を良くしていくためにはどうするかということを思考する能力をきめ細かくスウェーデンなどでは学校教育の中で重視していたわけで、そういう単に経済活動に役立つという教育だけではなくて、もっと生活に密着した、そういう家庭科とか社会科というものを私ももっと重視していく必要があるなというふうに感じております。
以上です。 |
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