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国会活動2006年
2006年4月12日(水)
本会議
学校教育法等の一部を改正する法律案に対する代表質問
[PDF・43KB]
扇千景・参議院議長(以下、扇議長)
これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、学校教育法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御異議ないと認めます。小坂文部科学大臣。
小坂憲次・文部科学大臣(以下、小坂大臣)
おはようございます。学校教育法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

近年、児童生徒等の障がいの重複化や多様化に伴い、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育の実施や、学校と福祉、医療、労働等の関係機関との連携がこれまで以上に求められております。

この法律案は、このような状況にかんがみ、児童生徒等の個々のニーズに柔軟に対応し、適切な指導及び支援を行う観点から、複数の障がい種別に対応した教育を実施することができる特別支援学校の制度を創設するとともに、小中学校等における特別支援教育を推進することにより、障がいのある児童生徒等の教育の一層の充実を図るものであります。

次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一に、盲学校、聾学校、養護学校の区分を廃止して、複数の障がい種別に対応した教育を実施することができる特別支援学校とし、特別支援学校においては、その学校に在籍する児童生徒等に対する教育を行うほか、小中学校等に在籍する障がいのある児童生徒等の教育に関し、必要な助言又は援助を行うよう努めることとするものであります。

第二に、小中学校等においては、その学校に在籍する教育上特別の支援を必要とする児童生徒等に対し、障がいによる困難を克服するための教育を行うこととするものであります。

第三に、盲学校、聾学校、養護学校ごとの教員の免許状を特別支援学校の教員の免許状とし、その授与の要件等を定めるものであります。

以上がこの法律案の趣旨でございます。
神本美恵子参議院議員(以下、神本議員)
神本議員
私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました学校教育法等の一部を改正する法律案について質問いたします。

質問に入る前に、私が出会ったすばらしい子どもたちの話をさせていただきます。
小学校1年生を担任したとき、そのクラスには言葉を発しないT君という自閉症の子がいました。1年生も終わりに近づいた三学期のある日の朝、教室は異様に静まり返っていました。その日の日直さんとして、T君がみんなの健康調べをしていたのです。先生、T君がお話ししているよ、遅れて教室に入った私に最後列の子が教えてくれました。でも、私には聞こえません。先生、T君の口を見てると聞こえるよ、子どもたちはそうして自分の名を呼んでくれるT君の声を理解し、全員が返事をしていたのです。1年間ともに学んだ日々、T君と話がしたいという子どもたちの思いが、声なき声を聞き取るという関係をつくり出したのです。T君が話したと歓声と拍手がやまなかった光景に胸が震えたことを今でも忘れません。

今、全国の小中学校で、このように可能性を秘めた子どもたちのすばらしい力によって、ともに学び、ともに育つ教育が実践されています。しかし一方で、ともに学び育つ支援体制が制度として確立していないために、親の付添いを強要されたり、学校行事から排除されたり、多くの困難に直面している現状もたくさん報告されています。

なぜ支援体制が進まないのか。それは、日本の障がい児教育制度が、1961年、文部省の「わが国の特殊教育」に示された、心身の故障者は、それぞれの故障者に応じた適切な教育を行う場所を用意するとする障がい児の分離別学体制が今なお続いているからです。

したがって、支援体制が進まないどころか、これまで長い間、地域の学校の通常学級を選択した子どもたちは、制度の枠外の子としてその数さえ把握されていませんでした。

昨年ようやく文部科学省が行った調査によれば、市町村就学指導委員会によって盲・聾・養護学校及び特殊学級に就学させるべきという判断を受けながら、保護者の選択で通常学級に在籍している児童が、小学校1年生のみですが、2005年5月現在で2,705名いることが明らかになっています。小学校1年生から中学校3年生まで、およそ2万人近い身体や知的に障がいのあるお子さんが通常学級に在籍していることが推測されます。

これらのお子さんについて、2001年、当時の遠山文部科学大臣は、参議院文教科学委員会で私の質問に対して、違法ではないとはっきり答弁されました。違法ではないが制度の枠外の子との位置付けのために、制度的に放置されているこれらの子どもたちの存在は、今回の改正案の中にどのように位置付けられているのでしょうか。文部科学大臣に伺います。

次に、本改正案が国際的な障がい者施策の流れを受け止めて提案されたものであるかという点についてお伺いします。

1975年に国連第30回総会が採択した障がい者の権利宣言に始まる一連の国連障がい者年行動計画、子どもの権利条約、障がい者の機会均等化に関する基準規則、1994年に特別ニーズ教育世界会議が採択したサラマンカ宣言など、これらの条約や宣言は、言うまでもなく障がい者を社会から分離することなく統合することを基調としております。

インクルーシブな方向性を持つ普通学校こそが、差別的な態度と闘い、喜んで受け入れられる地域をつくり、インクルーシブな社会を建設し、万人のための教育を達成するための最も効果的な手段であると述べているサラマンカ宣言は、確信にあふれ、今日の国際的な障がい者施策の方向性を示すものとなっています。

文部科学大臣、果たして文部科学省はこのような国際的な障がい者施策の潮流をしっかりと受け止めて今回の改正案を提出されたのでしょうか。お伺いいたします。

また、御承知のように、国際的な障がい者施策について、WHOからも医学モデル、社会モデルと言われる重要な概念モデルが示され、それを統合的に保障していこうという提起がされています。障がいを治療されるものとする医学モデルに対して、社会モデルは、障がいの多くが社会環境によってつくり出されているとし、社会生活全分野への障がい者の完全参加に必要な環境の確保を社会全体の共同責任とするとらえ方です。

日本の障がい者施策においてWHOの社会モデルはどのように受け止められているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

さて、今、国連では、障がいのある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約、いわゆる障がい者権利条約の策定作業が続いております。議長草案第24条の教育の項では、一人一人のニーズを可能な限り通常の教育環境の下で保障するというインクルーシブ教育を大前提とした論議が交わされております。まず、日本政府はこの議論にどのような姿勢で臨んでいるのか、外務大臣にお伺いいたします。

代表質問の模様
今年1月の第7回アドホック委員会で、策定作業に参加している日本政府委員からは、議長草案の、障がいのある人が障がいを根拠として一般教育制度から排除されないことという部分に対して、盲・聾・養護学校が一般教育制度には含まれないということから、「一般」という文言を削除するよう意見を述べたと伝わっております。これは事実でしょうか。

事実とすれば、その意見は、日本政府の障がい者施策のどこを踏まえてそのような意見を述べたものか、ここで明確にしていただきたい。日本政府委員の発言に会場にはどよめきが流れたと伝えられているだけに、看過できることではありません。アジアの一員として、また国際社会に貢献すべき日本としては、余りにも後ろ向きなお粗末な意見であり、自ら人権後進国を名のるに等しい発言と言わざるを得ません。外務大臣の明快な答弁を求めます。

次に、少子化・男女共同参画担当大臣に伺います。
教室は未来の社会という言葉があります。私は、今回の改正が、障がいのある子だけの問題、教育だけの問題ではなく、世界に類を見ない少子高齢社会を迎える日本社会全体の課題として、共生社会を実現するために、学校教育全体、日本の社会の在り方とも関連して、将来を見通して行われるべきと考えています。

内閣府においては、共生社会形成促進のための政策研究会を設け、例えば共に生きる新たな結び合いの提唱が公表されておりますが、政府が目指す共生社会とはどのようなものか、端的にお答えください。

次に、2004年に改正されました障がい者基本法との整合性についてお伺いします。
改正障がい者基本法は、「何人も、障がい者に対して、障がいを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」とし、国民の責務として、「社会連帯の理念に基づき、障がい者の福祉の増進に協力する」ことを求めています。つまり、障がい者差別禁止を理念とし、参議院では更にこれを補強して、障がい者が、社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に、分け隔てられることなく参加できるようにすることと附帯決議を付けております。障がいを理由に分け隔てることは差別という理念ですが、現行の学校教育法施行令は、障がいを理由に学ぶべき学校を自治体が一方的に分け隔てることを規定している、言わば教育における欠格条項とも言える差別的内容になっています。

文部科学大臣、今回の改正は、果たして障がいのある人への差別をなくし、社会連帯の理念を前進させることになるのでしょうか。お伺いいたします。

さらに、障がい者基本法は、障がい者福祉に関する施策を講じるに当たっては、障がい者の自主性が十分に尊重されることや、障がい者の意見を聴き障がい者の実情を踏まえた協議を行うことなどを求めています。さきに紹介しました国連の障がい者の機会均等化に関する基準規則でも、政府は障がいに関する事項の意思決定において障がいを持つ人の組織の諮問的役割をも認識すべきであると定めています。

そこで、文部科学大臣に伺います。
今回の法律改正案の基となった中央教育審議会には、障がい当事者が委員としてどの程度加わったのか。当事者の意見は適切に反映されたのか。また、障がいのある子どもや保護者が、就学先を決定するに当たり、自主性を持って選択できる仕組みが用意されるのか。就学の相談等に障がい当事者が加わってサポートする仕組みを用意していく考えはあるのか。お答えください。

以上、指摘してまいりました国内外の障がい者施策の方向性と、それに合致しない分離別学体制であるがゆえに起きている日本の教育現場での数多くの課題を、果たして今回の改正は解決するものになっているのかどうか、つまり共生共学の方向性を持っているのか、文部科学大臣の明快な答弁を求めます。

今回の改正案は、これまでの特殊教育を、重複化する障がいや、新たに支援を必要とするLDやADHDなどの発達障がいの子どもたちにも適用できる特別支援教育に転換することを趣旨として提案されています。

しかしながら、施設設備の改善、教職員配置の改善など、一人一人の個別のニーズにこたえ得る条件整備には全く手が付けられていません。このままでは、センター的機能を持つことになる特別支援学校の教職員も、新たな特別支援教育を行うことになる通常学校・学級の教職員も、過重な負担に戸惑うことになりかねません。これでは単なる名称の付け替えではないのかとの批判が出るのも無理はありません。

我が国が目指すべき社会は、障がいの有無にかかわらず、だれもが相互に人格と個性を尊重し合う共生社会です。その実現のため、ノーマライゼーションの理念を広げ、障がい者基本法や障がい者基本計画に基づく障がい者の社会への参加、参画に向けた総合的な施策が今政府全体で推進されています。その中で、学校教育は、障がい者の自立と社会参加を見通した取組を含め、重要な役割を果たすことが求められているのです。

すべての人が支え合い、生きる喜びを分かち合える共生社会を実現するためには、冒頭に御紹介しました子どもたちのように、できるだけ早いうちから障がいのある子とない子がともに学ぶ教育が不可欠であります。そして、そのことは、障がいのない子にとっても、ともに生きることを学ぶ掛け替えのないすばらしい教育の機会であることを再度強く申し上げ、私の質問を終わります。
小坂大臣
神本議員より5点のお尋ねがございました。

まず、小中学校の通常の学級に在籍する障がいのある児童生徒の位置付けのお尋ねについては、現在、小中学校の通常の学級には、各市町村教育委員会の判断により認定就学者を含め障がいのある児童生徒が在籍しております。これらの児童生徒に対しては、専門家による指導など必要な支援が行われております。今回の改正法案においては、小中学校におけるこのような障がいを持つ児童生徒のための取組について法律上明確化することとしております。

次に、国際的な障がい者施策の潮流の受け止めについてお尋ねがありました。
国際社会においては、共生社会の実現を志向することが大きな潮流となっているものと認識しております。そのような中におきまして、多くの国においては、我が国と同様、高い専門性を有する特別の学校を設けつつ、障がいのある児童生徒の就学については、保護者の意向を確認しながら決定されているものと認識しております。今回の改正案はこうした流れを認識し、児童生徒一人一人のニーズに応じた教育の充実を図ろうとするものであります。

次に、障がい者基本法と改正案との関係についてお尋ねがございました。
障がい者基本法は、障がい者差別の禁止とともに、障がい者の能力や状態に応じた教育の実施について規定しております。

御指摘の児童生徒の就学については、保護者や専門家の意見を聴きつつ総合的に判断することが重要であります。こうした判断の結果、障がいの状態に応じて盲・聾・養護学校に就学することは障がい者の差別に当たるものとは考えておりません。

なお、今回の改正案により就学制度の枠組みが変わるものではありませんが、就学に当たって、今後とも保護者などの意見を十分に聴くことが重要であると考えております。また、障がい者基本法の理念を踏まえ、交流及び共同学習を進め、社会連帯の理念の実現を目指してまいります。

次に、中教審及び就学先の決定への障がい当事者の参加等についてお尋ねがありました。
中央教育審議会の審議には2つの障がい者団体の代表が委員として参加していただいているほか、11の障がい者団体からヒアリングを行ってまいりました。これらの御意見は、答申の取りまとめの過程で適切に反映されているものと認識しております。

また、障がいのある児童生徒の就学する学校の決定に当たっては、保護者や専門家の意見を聴きつつ総合的に判断すべきものと考えております。なお、就学相談等については児童生徒の教育的ニーズの的確な把握が重要でありまして、各市町村教育委員会におけるそのための取組を促してまいりたいと存じます。

最後に、今回の改正案と国内外の障がい者施策との関係についてお尋ねがありました。
今回の改正案は、障がいのある児童生徒の現状を踏まえ、障がい種別を超えた特別支援学校の創設、小中学校等における特別支援教育の充実を図ることを通じて、これまで以上に一人一人の教育的ニーズに応じた支援を確立するものであり、自立と社会参加を目指した国内外の障がい者施策の方向性に沿ったものであると考えております。

また、学校教育が共生社会の実現に向けて果たす役割は大きいと認識しておりまして、今後とも交流及び共同学習の積極的な推進など努めてまいりたいと考えております。
川崎二郎・厚生労働大臣
日本の障がい者施策とWHOの社会モデルについてのお尋ねがございました。

医学モデルとは、治療やリハビリなど障がい者個人への働き掛けにより障がいの問題を解決しようとする考え方であり、一方、社会モデルとは、障がいを主として社会環境によってつくられた問題と考え、この解決には社会全体の取組が必要であるとの考え方であると承知いたしております。

我が国の障がい者施策につきましては、障がい者基本法に基づき、ノーマライゼーションやバリアフリーの理念の下に着実に推進することとされており、これらの基本的な理念は、社会全体の取組を必要とするWHOの社会モデルの考え方も踏まえたものであると認識しております。
麻生太郎・外務大臣
神本先生から2問ちょうだいをしております。

まず、障がい者権利条約議長案に関するお尋ねですが、政府としては、障がいのあります児童全員に対して義務教育の機会を保障することが重要であるとの考え方に立って交渉に臨んでおります。なお、すべての児童に対して義務教育の機会を保障することには多様な方法があると考えております。

次に、障がい者権利条約第7回アドホック委員会における日本政府の発言についてのお尋ねですが、政府としては、同条約関連規定との整合性を勘案し、「一般」という文言を削除するように提案をいたしております。

外務省といたしましては、今次条約交渉でインクルーシブな教育が大きな流れになっているということを踏まえまして、文部科学省と協議しつつ、次回会合の対応を検討していきたいと考えております。
猪口邦子・内閣府少子化・男女共同参画担当大臣
神本先生の御質問にお答え申し上げます。

先生の御質問にありました内閣府の共生社会形成促進のための政策研究会でございますが、ここにおきましては、我が国の目指すべき社会像につきまして有識者の方々に御議論いただきましたところでございます。この研究会では、論者によりまして共生社会のとらえ方は様々であることから、共生社会を一律に定義付けるのではなく、異質で多様な他者を互いに理解し、認め合い、受け入れるなどの五つの視点を御提案いただいたところでございます。

なお、政府の障がい者施策の基本的方向について定めました障がい者基本計画におきましても、この研究会の御提案の視点と同様の考え方で、21世紀に我が国が目指す社会は、障がいの有無にかかわらず、国民だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とする必要があるとしております。

政府といたしましては、青少年育成、高齢者社会対策、障がい者施策、そして犯罪被害者等施策など各分野の施策の推進によりまして、国民皆で支え合い、年齢や障がいの有無にかかわりなく安心して暮らし、同等に参加、参画できる共生社会の実現を目指してまいります。
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